双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
このまま、突き放されたとしてもおかしくはないと葵は思う。
 
だが彼はそうはしなかった。金網から手を離し、両腕で葵を包み込む。

泣きじゃくる葵を抱きしめて、温かくて優しい声音で囁いた。

「だけど、今回は信じてくれたんだろう?」

その言葉に、顔を上げて彼を見ると、穏やかな眼差しが自分を見つめていた。その中に、責めるような色は微塵も浮かんでいなかった。

「今回も、父と政務官は君を責めたはずだ。脅しをかけられたんだろう? しかも俺が婚約してるような嘘までつかれていた。それでも君は俺を信じて帰りを待っていてくれた。……それで十分だ。もう自分を責めないでくれ」
 
呪いのように葵を苦しめ続けた胸の奥底の塊が溶けていくのを感じていた。

そうだ、今回葵は屈しなかったのだ。
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