双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
でもマンションにたどり着き一階の自宅のドアを見た瞬間に、嫌な予感が的中したことを悟る。

ドアの前に背の高い男性が立っていた。

慌てて引き返そうとするけれど、ベビーカーを押していて素早く動くことができない。
 
晃介がこちらに気がついた。

「葵」

どうしてここがわかったのかと尋ねる必要はないだろう。昨日の夜間診療所で、葵は住所が載った保険証を提示している。

「……ルール違反じゃないですか?」

胸が切なく締め付けられるのを感じながら、葵は意識して冷たい声を出した。

それに、晃介は一瞬、傷ついたような表情になる。

「昨日君が俺の話を聞かずに逃げたからだ。確認したいことがあったのに」

「話すことなんてなにもないからです。……帰ってください」

突き放すように葵は言う。

いつもとまったく違う様子の母親を不思議に思ったのか、双子がベビーカーで大きな目をパチパチとさせた。

「俺から話があると言ったんだ、葵」

晃介がゆっくりと葵のところへやってくる。逃げたくてもベビーカーを押している状態で無理だった。

「でも……」

「捨てた男の顔なんて見たくもないのは当然だ。だとしても、君は俺に知らせなきゃいけないことがあるんじゃないか?」

彼の口から出た"捨てた男"という言葉に、葵は唇を噛んだ。
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