双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
晃介がゆっくり歩きだした。

「白河病院はここ最近、特に脳外科の分野に惜しみない資金を注力し続けた。最高の医師と最高の設備。これからも常に最先端技術を取り入れて、脳疾患に苦しむ患者に最新の医療を施すことを約束すると、父さん、あなたはセンター長に言ったそうですね」
 
父親まで、あと一メートルの距離まできて晃介は足を止める。
 
大介は答えなかった。

「……あなたのこの方針には、病院内では反対もあったと聞いています。だがあなたは反対する医師たちを切り捨ててでもこの道を進み続けた。……なぜですか?」
 
息子からの問いかけに、やはり大介は答えない。ただ無表情で息子を見つめるのみである。
 
晃介が彼の机の上のある物を手に取ってジッと見つめる。
 
小さな男の子を抱く、女性の写真だった。

「……母さんの症例を治したかったからだ」
 
その彼の声音が少し震えた。

「……皮肉なものだ。父さん、俺はずっとあなたを恨んでいた。すぐそばにいながら、母さんを助けられなかったあなたを。だから決してあなたのような医師にはならないと心に決めてこの道を進み続けた。……まさかあなたも同じ目的を持って進んでいたとは知らずに」
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