双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵の目から涙が溢れた。
 
最高の医療を追求するための資金を集めることに奔走した父親と、最高の医療技術を得るために臨床を優先させた息子、どちらかが欠けても今の結果は得られなかった。

「父さん、あなたは母の症例を根治できる技術をどうしても手に入れたかった。そのためにどんなに非道だと言われる手段も取ってきた。そしてようやくそれが実現した今、母さんと同じ症例に苦しむ患者を目の前にして、彼らを犠牲にすることができるのですか? そんなこと……できるはずがない」
 
言い切って、晃介は写真をもと場所へ置く。
 
それを視線で追っていた大介が掠れた声を出す。

「……だ」

「……?」

「そうだ‼︎」
 
突然拳を机に叩きつけ声をあげる。晃介に向き直り睨みつけた。

「そうだ! やっとここまでたどり着いた!」
 
そして一歩進み、晃介の胸ぐらを掴んだ。

「だがお前はなにもわかっておらん! いいか? 目の前の患者を救うだけでは意味がないのだ! 将来にわたって技術と設備を継承し維持し続け、未来永劫、患者を治療し続けなくてはならんのだ! それが最新の技術を手に入れた私たちの使命なのだ。……お前が!」
 
大介が、掴んだ手を激しく揺さぶった。

「甘ちゃんのお前が! それをするためには、どうしても後ろ盾が必要なのだ‼︎ そのために俺はたくさんの縁談を持ってきてやったというのに……! お前は!」
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