双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「おーちだ!」
「おーちだ!」
 
夏の日差しが差し込む部屋に、晴馬と悠馬の元気な声が響いている。

大介がひとりで住む白河家のリビングである。
 
ソファに座る大介に、双子がくっついて小さな手を差し出している。
 
さっきから「おーちだ!」と繰り返していた。

「どーちだ!」と言っているつもりなのだ。拳を作った手の中のどちらにおもちゃが入っているかあてる遊びである。
 
本当ならおもちゃを手に入れる時に隠さなくては意味がない遊びだけれど、幼いふたりにはまだそこまではできない。

ただ手に入れて差し出すだけである。
 
それでも大介は、うーんと迷ったふりをしたり、わざと間違えたりながら、何度も何度もふたりの遊びに付き合ってやっていた。

「おー! そっちだったか、こりゃしまった」
 
からっぽの手を広げ得意そうにニカッと笑う悠馬に、大介が大げさに悔しがって見せる。双子が大喜びできゃっきゃと声をあげた。
 
土曜日のこの日、葵は子供たちを連れて大介の家を訪れた。

大介が手術から生還し退院してから数カ月の間にできた家族の新しい習慣である。
 
母と休みが合う週は母に会い、それ以外の休みに時々こうやって、大介に会いにやってくる。
 
子供たちは、祖母と祖父の愛情に包まれ、見守られて、先日二歳の誕生日を迎えた。
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