双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
手術は成功したものの後遺症で歩行に少し不自由が残っている大介は、普段は自宅で二十四時間の在宅看護を受けている。

長年お世話になっている家政婦さんもいるからひとり暮らしには問題ない。
 
食事もすべて用意してくれるけれど、葵がくる日は、葵が準備した昼食をみんなで食べることにしていた。
 
なにかの折に作った葵の味噌煮込みうどんを、大介が気に入ったからである。
 
以来、お昼はなににするかと尋ねると必ず味噌煮込みうどんという返事が返ってくる。

晃介と大介は、普通の親子の関係ではなかったという話だけれど、それにしてはまったく同じメニューを好きなのがおかしかった。

今日も外はうだるような暑さだが、返事は変わらなかった。

「おーちだ!」
 
相変わらずソファでは双子と祖父の微笑ましいやり取りが続いている。

「あれれ? どっちだったかなぁ?」
 
わざととぼけて見せる大介に、テーブルの上に味噌煮込みうどんを置きながら葵は笑みを浮かべる。
 
大介が気まずそうに咳払いをした。
 
こうして葵と子供たちが大介と交流することについて、晃介ははじめ否定的だった。
 
父親として医師として、なにより妻を失った夫として、父親の目指したものについては理解できる。

かつての恨みはもうないけれど、それでも葵に対してやったことは許せないと言ったのだ。
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