双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
大介もそれについて、あれこれ言い訳したりはしなかった。

『私はいつも自分が正しいと思うことをやってきた。それについて批判は覚悟の上だ。君を傷つけたのも間違いないとは思うが、あの時はそれが最善の方法だったのだ。だが理事長職を退いた今、もはや晃介のことについて口出しするつもりはない』
 
かなり回りくどい言い方で、葵との結婚を認めたわけだが、謝罪とも言えないものだったが、葵はその言葉を迷うことなく受け入れた。
"本当にいいのか?"という晃介からの問いかけにも本心から頷いたのだ。
 
ほかでもない、晃介からおそわった気持ちだった。
 
人生の限りある時間を、人を憎むのではなく愛することに使いたい。
 
もう過去にこだわるつもりはないから一度子供たちに会ってほしい。
 
そうして実現した面会は、こうして恒例のものとなったわけである。
 
まさか大介がここまで孫にメロメロになるとは思わなかったけれど、仲良く笑い合っている三人の姿を見ると、自分の選択は間違っていなかったと思い嬉しかった。

「おーちだ!」
 
悠馬がもう何度目かわからないくらいの『おーちだ』を口にして、小さな拳を差し出した時。

「お、"どーちだ"か」
 
楽しげな声が聞こえて、葵は入口に視線を移す。

晃介だった。

いつもは葵と一緒にここを訪れるのだが、今日は午前中仕事があって出勤していた。勤務が終わったから直接こちらに帰ってきたのだ。

「おかえりなさい」
 
声をかける葵に、にっこりとしてからリビングの三人に歩み寄る。

「パッパ!」と言って嬉しそうにする晴馬と悠馬の頭を撫でた。

「じじにリハビリをしてくれてだんだな、えらいぞ。こういう遊びは今のじじには最適だ。短期記憶を司る海馬が刺激される」
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