双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
彼自身はスウェーデンから持ち帰った技術でひとりでも多くの患者を助けるべくオペに明け暮れる日々だ。ほかの病院からの研修依頼もあるから、理事の仕事を中心に、というわけにはいかない。
 
白河病院は高梨新理事長のもと新しいスタートを切っているという。
 
高梨の患者や病院職員を思う人柄は葵もよく知っている。

きっとうまくいくと思ってはいるが、やはり大変なこともあるのだろう。ちょくちょくここへやってきては、大介にアドバイスを求めているようだ。

「またそんなことを言っておるのかあいつは」
 
大介が渋い表情になった。

「せっかく新しい体制になったのに、古い人間を戻しては意味がないだろう。話を聞く限りは上手くいってるはずなのに。……どうも人がよすぎるんだな、あいつは。話ならいくらでも聞いてやるから、甘えるなと言っておけ!」

「だけど、家にいるだけより、なにかしてる方がいいだろう?」
 
主治医としての言葉だった。

今まで忙しくしていた人なのだ、いくら病を得たからといってずっと家にいるだけではよくないと思ったのだろう。

口には出さないけれど認知症のリスクが高まると思っているのだ。

「家にいるだけ、とはなんだ。だけ、とは。リハビリもあるし、私は忙しいんだ」
 
大介が不満気に言う。
 
少し言葉足らずな大介の説明に、葵は補足を入れる。

「お義父さん本当に忙しいのよ、晃介。晴馬と悠馬のアルバムの整理をお願いすることになったでしょう?」
 
晴馬と悠馬がこの家に来るたびに写真を撮っている大介は、それを几帳面に編集してアルバムにして残している。
 
葵はよくそれを見せてもらうのだが、ほとんどプロの仕上がりだ。
 
さすが優秀な人はなにをやっても完璧なのだ、と葵は感心するばかりだが、一方で今までのアルバムを見たいと言われて、気まずい思いにもなっていた。
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