双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
シングルマザーとしての双子育児は壮絶で写真はたくさん撮っていても形にしていなかったからだ。
 
正直にわけを話すと、"じゃあデータを出しなさい。私がやろう"という話になったのだ。

「それから今度、お庭のリフォームもするんだって。子供たちが遊べるように少し手を入れてくださるみたいで……」

「庭を?」
 
晃介が瞬きをして父を見る。
 
大介が照れたように咳払いをした。

「次の手入れが来月だから、ついでにな」
 
今の白河家の庭も立派だけど、純日本庭園だから、子供たちはあまり楽しめない。

ついでだと大介は言うが、さっき見せてもらったいくつかの案は、結構大掛かりなものだった。
 
これから本格的な打ち合わせも始まるから、リハビリ、通院などを考えたら、忙しいというのは本当だ。

「……私はふたつのことをいっぺんにはやれんタチだ」

呟いて、またうどんを啜る大介を、晃介は感慨深気な眼差しで見つめてから、素直に頷いた。

「……わかりました。高高梨理事長にはそう伝えておきます」

「ああ、話ならいつでも聞くし、根回しが必要そうな案件は人を紹介することはできるから、いつでも来いと言っておけ」

「はい」
 
家庭を顧みず、仕事だけに邁進した不器用な父親を、恨む気持ちはもうないようだ。
 
後から聞いた話によると、ちょうど晃介が今の双子くらいだった頃、白河病院では隣県に新設された大学病院に多数の医師が引き抜かれるという出来事があったという。

その危機から病院を立て直し日本一と言われるまでにするには並々ならぬ苦労があったのだ。
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