双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵が彼の腕の中に収まると、ドライヤーの風と晃介の指が優しく髪を梳かしはじめた。
 
彼は疲れていればいるほど、葵の髪に触れたがる。

葵の髪を乾かして葵の香りを感じると疲れが取れるのだという。
 
付き合っている時もその傾向にはあったけれど、結婚してからさらにひどくなったと葵は思っていた。
 
とはいえ、髪を乾かしてもらうのは、葵にとっても極上のリラックスタイムだった。

大きな手に、優しく髪を梳かされるとこれ以上ないくらいに心地いい。
 
しかも彼にプレゼントしてもらった高級ドライヤーの風のおかげで仕上がりも上々だ。

「んーいい匂い」
 
すっかり髪が乾いたあと、ドライヤーを傍に置いた晃介に、そのまま後ろから抱きしめられる。葵は彼にもたれかかり目を閉じた。
 
子供たちが寝たあとにこうやってふたりでいる時間も、葵にとってはなによりの癒しだった。

どんなに昼間慌ただしくして、たとえば子供たちを叱ってしまったことに落ち込んだとしても、この腕に抱きしめられるだけで、また頑張ろうという気になる。
 
晃介が葵の髪に顔を埋めて呟いた。

「髪がふわふわだ。ドライヤーのおかげだな」
 
葵は笑みを浮かべた。

「うん、やっぱり全然違う。半年使って実感した。前よりまとまるもの。結婚式に備えて伸ばそうかと思ってるんだけど、これなら大丈夫そう」
 
普段は手入れが楽で縛ることもできるセミロングで維持している。

けれど、せっかくウエディングドレスを着るのだから、ドレスに合う髪型にしたかった。
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