双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
晃介が、ガバッと顔を上げた。

「伸ばすのか⁉︎」

「う、うん、ドレスに合う髪型にしたくて……長いのは変かな?」
 
少し驚いて聞き返すと、彼は首を横に振って優しい言葉をくれる。

「いや、似合うと思うよ。葵の髪、綺麗だし」
 
でもそこで。

「……乾かす部分が多くなって一石二鳥だな」
 
なんてことを呟いたものだから、葵はぷっと噴き出した。

「もう! そっちの方がメインなんでしょ」

「いや……もちろん結婚式での葵の髪型も楽しみだよ」
 
にっこり笑って言い訳をする彼の身体に身を預けて、葵はくすくす笑い続けた。
 
一緒に働いていた頃、完璧すぎる容姿と医師としては最高のキャリアを持つ彼は、病院では男女問わず一目置かれていた。

ロッカールームでの噂の話も、"お近づきになりたいけれど、とてもじゃないがプライベートの質問などできない"といったものばかりだったのに。
 
まさかこんなに変わったこだわりがあるなんて! 
 誰も想像できないに違いない。

「でも、結婚式が終わったら切るんだからね?」
 
このままじゃ結婚式後に髪を切る時に一悶着あるかもしれないと思い葵は笑いながら釘を刺す。

そこで昼間の出来事を思い出し「そういえば」と呟いた。

「お義父さん、結婚式の時期について納得してくださってよかったね」
 
昼食中に、結婚式の日程について、大介がごちゃごちゃと言っていたことについてである。
 
うどんを食べ終えた大介は、双子とリングボーイの練習をしはじめた。

『じじが神父さんだ。晴馬、悠馬そっちからゆっくりと歩いてきなさい』
 
などと言って。
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