双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
理事長職から退いて病院経営に口出ししないと決めた以上、晃介の結婚相手にも口出しする必要がなくなった大介は、むしろ葵へは特に気を遣っているように思う。
 
葵のすることを否定したり、小言を言ったりすることはない。

実家への訪問も本当は毎日でも子供たちに会いたいだろうことは見え見えだけれど、こちらから行くと言うまで催促したりすることもなかった。

「晃介の結婚相手にこだわっていたのは、本当に病院のことを思ってのことだったのね。私個人が嫌われていたわけではなさそうで、ホッとしてる」
 
葵の言葉に、晃介は一応納得したように頷いた。

「ならいいけど」
 
でもすぐになにかを思い出したように顔をしかめた。

「だけど今日のあれはよくなかったんじゃないか? ほら……三人目とかっていう」

「三人目……? ああ、あれね」
 
早く式を挙げないと三人目ができるという発言だ。

受け手によっては、セクハラや孫催促と取られかねないだろう。
 
なにごともなく妊娠し出産できるということが、決してあたりまえではなく奇跡なのだということを知っている医師である晃介にとっても引っかかる言葉だったようで、その場で注意してくれた。

「もう言わないようにまた今度きちんと言っておくよ」
 
葵への優しさに満ちたその言葉が嬉しかった。

「ありがとう、晃介」
 
そして少し考えてから口を開いた。

「でもそこまでしてくれなくて大丈夫。私は気にならないもの。お義父さんいつもは気を遣ってくださってるでしょう? 今日はつい口に出ただけだと思う。……実は、今日の午前中……子供たちの写真のデータを渡した時のことなんだけど」
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