双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
その言葉に葵の脳裏にあの夜の出来事が鮮やかに蘇る。晃介が『一生かけて、葵の心を取り戻す』と言ってくれた日のことだ。
 
一生かけて。
 
彼はそう言ってくれたけれど、本当のところあの瞬間にこうなることが決まっていたように思う。

再会してからの葵は、晃介のペースにやられっぱなしだった。
 
葵は笑みを浮かべた。

「一生かけてもって言ってくれたよね。私、あれで気持ちを止められなくなっちゃったんだよ」
 
なにが起こるかわからない未来に怯えていたのに、彼を愛する思いだけが勝手に走りだしてしまったのだ。

「その後も晃介は私と子供たちを愛情で包んでくれた。私にとっても晃介がどうしても必要なんだって、そう思わせてくれたから、困難を乗り越えようって気持ちになれたの。……晃介、頑張ってくれてありがとう」
 
彼の胸に顔を埋めて、頬ずりをすると胸が温かくて幸せな思いに満たされていく。

「葵……」
 
名を呼ばれて顔を上げると、ゆっくりと近づく彼の視線。

広い背中に腕をまわして、葵は目を閉じてそれを待つ。

「ん……」
 
そっと離れて、もう一度。
 
でもすぐに、短いキスでは物足りなくなってしまう。

「ん……、あ」
 
パジャマの上から彼の手が這いまわりはじめるのを心地よく感じながら、葵は念のための確認をする。

「こ、晃介……。明日は、子供たちの水着を買いに行かなくちゃいけないんだからね」
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