双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
夏休みの旅行に必要な買い出しである。ふたりの休みが合う明日、どうしても行かなくてはいけないのだ。
 
暗に"次の日に響かないように"とお願いしているわけだけれど、残念ながら彼はまったく気にする様子がない。

「べつに朝早く行くわけじゃないだろう。寝坊したって大丈夫だよ」
 
そんなことを言いながら、葵の耳に頬にキスを落としていく。

手はパジャマのボタンをほとんど外してしまっている。

「ん……でも、子供たちは早起きなのに」

「大丈夫だっていつも言ってるじゃないか。ほら、もう諦めて。俺に葵をひとりじめさせてくれ」
 
そう言って彼は葵を抱き上げてベッドの上に寝かせてしまう。あっという間に彼の腕と身体に囲まれた。
 
すでに父親の顔ではなくなった晃介が、葵を見下ろしていた。
 
その視線に、葵はなんだか不穏なものを感じでしまう。

そういえばここ最近、彼の仕事が忙しくて夫婦としての触れ合いをあまりできていなかった。
 
それは仕方がないことだし、お互いに不満があるわけではないけれど、葵の経験上こういう夜の彼は……。 

「て……手加減してね?」
 
自分を囲む腕のシャツを掴んで、思わず葵は直接的な言葉でお願いをする。
 
それなのに、彼はにっこりとするばかりだった。

「こ、晃介、あの……!」
 
さらになにか言わなくてはと、口を開きかけた葵の唇は……。

「んっ」
 
熱く彼に塞がれた。
 
一時は諦めた幸せなふたりの家庭。その片隅で紡がれる夫婦の愛。
 
葵にとっては、少し濃厚すぎて長すぎるふたりの夜が、今はじまった。
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