双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「ママは疲れているからもう少し寝かせてあげよう。ほらホットケーキが焼けるよ」
 
後ろから晃介が優しく言って、悠馬をキッチンに連れていった。

少し開いたドアの隙間から、ホットケーキの焼けるいい匂いが漂ってくる。
 
最近の白河家ではパパが作る時の朝ごはんは、たいていホットケーキなのだ。
 
子供たちは家で焼くホットケーキが大好きで、ふたりとも驚くほどよく食べる。
 
でも葵は、あまり作るのが得意ではなかった。
 
火加減がうまくできなくて焦げてしまうのだ。

さらにいうと後片付けも、ふたりが粉を混ぜたがるのも面倒で、食べるだけならともかくとして、自分ではめったに作らない。
 
一方で仕事が忙しくてふたりとの時間が少ない晃介は、少しでもふたりが喜ぶならと面倒くさがらずにやってやる。

しかももともと器用だからか、驚くほどふんわりと焼きあがるのだ。
 
それを知っている子供たちは、パパが朝食を作る時は『ケーキ、ケーキ』とせがむのだ。

「ほら焼けた!」
 
楽しそうな晃介の声に、きゃきゃと子供たちが歓声をあげている。

我先にとテーブルに座ろうとしているのだろう。パタパタと走る足音がした。

「食べてていいぞ。パパはおかわりを焼いてるからな。晴馬、おかわりはあるから、悠馬の分を取るんじゃないぞ。ママの分ができたらみんなでママを起こしにいこう」
 
晃介の声を聞きながら、葵は今まさに幸せの中心にいると感じていた。 
 
愛する人がそばにいて、美味しいものを一緒に食べて笑い合う。

それだけのことがどれほど尊くて大切なことなのか葵はよく知っている。
 
もう絶対に手放さないといつも心に留めていた。

「晴馬、もう食べたのか? じゃあもう少しで焼けるからこっちへおいで。悠馬の分もあるからな」
 
優しく子供たちに話しかける愛おしい人の声を聞きながら、葵はまた眠りに落ちた。
 
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