双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
受付の向こうで、事務員たちが囁き合う声が聞こえてどきりとする。

白河病院、外科医、という言葉に苦い思い出があるからだ。
まさか、という思いが頭をよぎる。

 ——もしもそうだったらどうしよう。

ただでさえ我が子の怪我で不安なのに、別の心配ごとが頭に浮かんでしまい、慌てて葵は落ち着けと自分自身に言い聞かせた。
 
今事務員たちが口にした白河病院とは、正式には白河医科大学病院といって都内でも屈指の最先端医療を行う大病院だ。

所属する医師は研修医を含めると、数百名をくだらない。
 
今から診察を受ける医師が、白河病院から来た外科医だとしても葵が会うことを許されないあの彼であるはずがない。

「谷本さん、診察室へどうぞ」

 さっきの看護師がやってきて、葵と晴馬を診察室へと促した。

「僕、歩けるかな?」

 晴馬が自分の足で歩いて看護師についていく。咲希は寝ている悠馬を抱いて立ち上がった。
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