双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
その葵に晃介が気がついて、なにか言いたげな表情になる。

「葵……」

「こ、子供たちに食べさせる間、あっちのリビングで待ってて」

目尻の涙を拭いて、葵は彼の言葉を遮った。

晃介が一瞬悔しそうに口を閉じる。

でもすぐに気を取り直したように息を吐いて口を開いた。

「ここで見ててもいい?」

「……え?」

「見てたいんだ。……葵が嫌じゃなければ」

そう言って子供たちに視線を送る。

その眼差しに、葵の胸がキリリと痛んだ。

……彼にとっても双子を目にする最後の機会だ。

だからしっかりと目に焼きつけておきたいということなのだろう。

そんなことを考えたら、とても嫌だとは言えなくて葵は素直に頷いた。

「……いいよ」

晃介は嬉しそうに向かいの席に腰を下ろした。

葵の方は角に座り、いただきますをさせる。
ふたりとも赤ちゃん用のスプーンで器用にすくって食べだした。

「へぇ、もう自分で食べられるんだな」

心底感心した様子で晃介が言う。

もちろん完璧というわけではなく葵のサポートが必要だが、それでも一歳半にしては上手な方だった。

葵は思わず口もとに笑みを浮かべた。

「うん。保育園でも褒められるんだよ。……食い意地が張ってるだけかもしれないけど」

そう言って彼を見ると、晃介がこちらをジッと見ている。

 慌てて葵は彼から目を逸らした。
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