双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「ふ、双子だから、私の手が足りなくて。なにもかもやってあげられないの。だからしかたなく自分でやろうとするのかもしれないけど」

晃介が頷いて、また少し考えてから口を開いた。

「それ、やってみてもいい?」

双子にカレーを食べさせるサポートだ。

「え? ……でも」

「やってみたい」

葵はしばらく逡巡する。幼児にご飯を食べさせるのは意外と難しい。

それに双子が知らない人から食べさせてもらうのを嫌がるかもしれないし……。
 
でも、これが最後かもしれないという考えが再び頭に浮かび、ノーとは言えなくなってしまう。

「……じゃあ、お願いします」

その場を譲り手にしていたスプーンを渡すと、彼は嬉しそうに双子に話かけた。

「ふたりとも、いっぱい食べような。お、悠馬上手だな。うまいか?」

少しぎこちない手つきで、双子が自分で食べられなかった分を口に入れてやる。

ふたりを見つめる視線も声も、これ以上ないくらいに優しかった。

また目に涙が浮かんでしまい、葵は慌ててうつむいた。

こんな光景を目にしてしまったら、いったいなにが正解なのかわからなくなってしまう。

「葵、晴馬の分がもうすぐカラだ。おかわりは……。あ、待てよ、悠馬のやつを取るなって」
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