双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
診察室は、真ん中に診察台と患者用の丸い椅子、向こう側に医師のデスクがあるシンプルな空間だ。

葵たちが足を踏み入れたと同時にデスクに座ってパソコンを触っていた男性医師が振り返る。すぐにガーゼを頭に貼り付けた晴馬に目を留めて話しかけた。

「僕、どうした? ……頭か」

そう言ってガーゼをそっとめくる。

「これは痛かったな」

晴馬が怖がらないように優しく声をかけながら真剣な目で傷を診る。

その彼を、葵は息を殺して見つめていた。
悠馬を抱く腕に力が込もる。

「先に消毒させてくれ、ちょっとしみるぞ。お、泣かないな。強いじゃないか。よし、一旦終わりだ」

まだ会話が成立しない小さな晴馬に、彼は丁寧に説明しながら慣れた手つきで消毒をする。

その声も手も患者を診る真剣な眼差しも、二年半前となにひとつ変わっていなかった。

消毒をしながらひと通り患部を確認し終えた医師が、今度は葵に視線を移す。

「お母さん、傷は……」

そこでようやく彼は葵に気がついた。

治療方針を説明しようとしていた口を開いたまま目を見開いて腕の中の悠馬、それから晴馬を順番に見て言葉を失っている。

そしてなにかを言いかけたところで看護師が首を傾げた。
< 3 / 188 >

この作品をシェア

pagetop