双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵が知る中で彼は一番、優しくて強い人だ。
 
その彼を、自分はひどく傷つけている。
 
それはすべてが葵のせいというわけではないけれど、まったく違うとも言い切れない。彼を信じられない、弱さが招いたことでもあると思う。

「ごめんなさい……」
 
小さな声でそう言うと、靴を履き終えた晃介が振り返り、ふわりと微笑んだ。

「なんで謝るんだ。今日は楽しかったよ。ありがとう、おやすみ」
 
静かに閉まったドアを見つめたまま、葵はしばらく動けなかった。
 
胸がドキドキと高鳴って苦しいくらいだった。
 
笑うと右の眉が少し高く上がる、はにかむような彼の笑顔。
 
あの笑顔が、葵はなにより大好きだった。
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