双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「……わかりました。ですが、業務を減らす必要はありません。今まで通りでお願いします。それを了承いただけないなら、理事の話はお断りします」

その答えに大介は眉を上げたが、なにも言わなかった。

「用件はそれだけですか? ならこれで失礼します」

そのまま部屋を出ようとすると、父に止められた。

「夕食を食べていけ。用意してある」

それに、迷うことなく晃介は答えた。

「調べ物がありますので、……それでは」

親子とは思えないくらい他人行儀な会話だが、これが白河家では普通だった。

昔から家庭を一切顧みず、母と自分をほったらかしだった父との間に親子としての情はない。

それどころか、晃介は彼を憎んでいるといってもいいくらいだった。

原因は、母の死だ。

晃介が医大を受験する年、母の脳に腫瘍が見つかり、治療の甲斐なく三カ月後に亡くなった。

珍しい症例で誰もが不運だったと言ったけれど、そうではないと晃介は思っている。
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