双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
母は病気が見つかる半年前から頻繁に起こる頭痛を父に訴えていたのだ。

でも父はそれを家庭を顧みない自分へのあてつけだと思ったようだ。気のせいだろうと繰り返すばかりだった。

製薬会社の社長令嬢だった母とは、いわゆる政略結婚だったから愛情はなかったということか。

だが母の方は別だった。父を信じ、父の言う通り痛み止めでやり過ごしていたのだ。

晃介が受診を強く勧め、検査した時にはすでに手遅れの状態だった……。

ひとりでも多くの患者を救うために病院経営が大切なのは理解できる。だから理事にもなる。

だが絶対に父のような医師にはならないと晃介は固く心に決めていた。

自宅マンションへ戻った晃介は、車の鍵をセンターテーブルへ置き、リビングのソファへ身を沈める。
そして一昨日からの二日間で起こった奇跡のような出来事に思いを馳せた。

葵が姿を消してからずっと、晃介は色のない世界を生きてきた。
どうやっても消えない彼女への想いを抱えて、ただ目の前の責任を果たし続ける日々だ。

葵から別れを告げられたのは突然のことだった。

学会のため二週間地方へ行っている間に、彼女はいなくなっていた。
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