双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
いつもなら双子にご飯を食べさせるのは葵の役割だから自分の分の朝食をゆっくり食べる暇はない。

あれこれやっているうちに忘れてしまいトースターに食パンがほったらかしになっていて、夕方になって気がつくこともあるくらいだ。

どこかゆったりとした気持ちで自分の食べる分を準備するなんて彼らが生まれてからはじめてのことだった。

「晃介も……食べる? ただのジャムパンとコーヒーだけど」

 尋ねると、晃介がこちらを見て微笑んだ。
「いいのか? ありがたい。朝ごはんは食べてきたけど、また腹が減ってる」

食パンをトースターに並べてセットして、コーヒーの準備をしながら葵は考えを巡らせる。そしてさしあたって今聞いておくべきことを口にする。

「あの、晃介?」

「ん?」 
「あのさ、このこと……誰かに話した?」
 
なにげない風を装って葵は彼に尋ねた。彼が家に来ていることを誰かに知られるのがとにかく怖かった。

直接大介に言わなくても職場が一緒なのだからどこかから漏れないとも限らない。

「……いや、誰にも」
 
晃介が、悠馬が落としそうになったりんごを受け止めながら首を横に振った。

その言葉にとりあえず葵は安堵する。

……でもそれでは心もとない。

このことを、誰にも言わないでほしいとお願いしたら、彼はどう思うだろう?

ふたつのカップにコポコポとお湯を注ぎながら葵が考えていると、晃介が口を開いた。

「俺は葵が嫌なら、絶対に誰にも言わないよ。この子たちの父親でいさせてもらえるだけで、満足だ」

その言葉に驚いて振り返ると、真摯な眼差しが真っ直ぐに自分を見つめていた。
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