双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
ふたりが出会ったのは、葵が二年半前まで勤めていた白河病院だった。

当時からすでに彼は、優秀な脳外科医として頭角を表しはじめていた。

しかも医院長のひとり息子だから、将来は病院のトップに立つことが確実視されている。

それでいてえらぶるようなところは一切なく、親身になって丁寧に治療にあたるから患者や職員からの信頼も厚かった。

くわえて、百八十センチの長身に精悍な顔つき、印象的な眼差しの、どこからどう見てもカッコいいとしかいいようがない容姿とあらば、周りの女性たちは放ってはおかない。

ロッカールームで繰り広げられる看護師仲間の噂話は、いつも彼のことばかりだった。

そんな彼と目立たない看護師の葵が話すようになったのは、ちょっとしたキッカケだった。

当時入職一年目で新米だった葵は、休憩時間を外科病棟の屋上で過ごしていた。

隅っこにあるめったに人が来ない忘れられた休憩スペースである。

以前はそこで休憩する人もいたようだが何年も前にカフェテリアのようなお洒落な食堂が別棟で建てられたから、滅多に人が来なくなったのだという場所だ。

葵はそこでお昼ご飯もそこそこに、勤務時間中にメモしたことを復唱していたのである。

当時の葵に覚えることは際限なくあった。
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