双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
自分の子だから愛情を注ぐのはあたりまえだというのは綺麗ごとだと葵は思う。

お腹の中に命が宿った瞬間からずっとそばにいる葵はともかくとして、彼は先週会ったばかりなのだ。まだ戸惑っていてもおかしくはない。

そもそも出産自体知らなかったのだから、子供に対する責任を煩わしく感じたっておかしくはないのに。

受け入れるどころかもうすでに葵と変わらないくらいに双子のことを考えてくれている。それが少し不思議だった。

不自然、とまではいかないけれど。

「すごく可愛がってくれて、ありがたいけど。でもいきなり自分の子がふたりも現れて、戸惑ったりしないのかなぁって……」

手元のカップを見つめて、言葉を選びながら葵は言う。

晃介はそれを、瞬きをしながら聞いていた。

「晃介は出産に同意したわけじゃなから、勝手に産んでって怒られたって仕方がないと思ってたくらいだったもん。会ってまだ一週間なのに、そこまでしてくれるのがちょっとびっくりっていうか。どうしてかなって……」

その葵の疑問に、晃介はしばらく沈黙してから、ぽつりと呟いた。

「どうして、か……」

そして少し遠い目をして、静かに話し始める。

「……俺、葵のこと、本当に好きだったんだ」
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