双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
その言葉に、ハッとして晃介を見ると、彼はわずかに微笑んだ。

「大好きだった、愛してたんだ。葵がそばにいれば、それだけで幸せだった。……一生、大切にするつもりだった」

切ないさを滲ませる彼の声音に、葵は言葉を失って彼を見つめた。

晃介が目を伏せた。

「……葵がいなくなった二年半はつらかったよ。仕事も、食事も、なにもかも意味がないように思えて、正直言ってどうやって過ごしていたか覚えてないくらいだ」

彼の口から語られるふたりの空白の時間。低い声音と暗い瞳に、葵の胸がきりりと痛んだ。

自分も同じようなものだった。

突然奪われた彼との未来。無理やり選ばされた道のその先は、彼と過ごした煌めくような日々とは真逆の世界が広がっていた。

見るものすべてが灰色にしか見えなくて、なにを食べても砂のような味がした。

それでもどうにかやってこられたのは、子供たちがいたからだ。彼らの存在に救われた。

晃介が、子供たちが眠る寝室の襖に目をやった。

「でもあの子たちが自分の子だと確信した時、世界が変わったように感じたんだ。あの子たちが俺を必要としてくれているなら、俺はいる意味がある。……生きていける。大げさじゃなくそう思ったよ」

晃介が葵に視線を戻す。瞳に光が戻っていた。

「たとえ、葵の心が戻らなかったとしても、ふたりが愛し合った事実は残るんだ。かけがえのないふたつの命として」
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