双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
色を失った味のない世界を、彼はたったひとりで過ごしてきた。

そこに突如として現れたふたりに、希望を見出したのだとするならば、再会してからの彼の行動は納得だ。

喉の奥が熱くて、胸が締め付けられるように痛かった。

晃介が眉を寄せて葵を見た。

「葵? ……悪い。子供たちのこと、こういう言い方をされるのは嫌だったか?」

そう言われてはじめて、葵は自分が泣いていることに気がついた。

問いかけには答えられなくて、ただ首を横に振った。

"自分もそうだった"と言えたなら、どんなにかいいだろう。

私もあなたと同じことを考えた、たとえふたりが結ばれなくても、愛し合った証があれば、生きていけると思ったと。

「……晃介」

「ん?」

「あの子たちとのこと、これからいっぱい愛してあげてね」

今言える精一杯の言葉だった。

つらくて悲しい思いをさせたことへの償いにもならないだろう。

——それでも。

「ありがとう」

晃介が、その言葉を噛み締めるように目を閉じた。

「じゃあ、そろそろ帰るよ。また来る」

「うん……。気をつけて」

涙を拭いて、葵は彼を玄関まで見送る。
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