双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました

真っ直ぐな思い

「おはようございます、伊東さんいかがですか?」

声をかけながら病室のドアを開けると、中にいた女性がベッドから起き上がった。

「先生、おはようございます」

「変わりはないですか?」

「はい、やっぱりお腹の傷は痛いですけど」

入院中でありながら幸せいっぱいだというのが表情から溢れているこの患者は、昨日白河病院で出産したばかり。

脳の疾患によるハイリスク出産で、晃介も脳外科医として帝王切開に立ち会った。

「あまり痛むようなら無理しないで痛み止めをもらってくださいね」

晃介の担当は、お産により彼女の脳疾患が悪化しないよう見守ることだが、安心させるためそう言う。

「昨日の検査では頭の方も特には問題ありません。このままいけば予定通り赤ちゃんと一緒に退院できますよ」

彼女はホッとしたように涙ぐんだ。

「先生、ありがとうございます。私が赤ちゃんを抱けるなんて夢みたいで」

「伊東さんがしっかりと病気と向き合ってこられたからですよ。僕も嬉しいです。さっき新生児室を覗いてきましたけど、赤ちゃんも元気そうだった。よかったですね」

日常生活に支障はないが、しっかりと管理していかなくてはならない疾患を抱える彼女は、もともと晃介の患者で出産に関しても慎重に相談しながら進めた。

晃介としても感慨深いお産だった。

「では退院前にまた来ます」

そう告げて、病室を出る。
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