双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
廊下を進み外科病棟へ向かう途中、新生児室を通りかかる。ガラス張りの向こうに新生児が並んでいる。

みゃーと泣く声が可愛らしかった。

産婦人科病棟らしいこの光景を晃介は今まで何度も目にしたことがある。

それが今は以前とは違って目に映るのだから我ながらげんきんなものだ。

言うまでもなく、葵と双子たちの存在がそうさせているのだろう。

同時に、いつだって命がけである出産を葵はひとりで乗り越えたのだということに思いあたり胸が痛んだ。

きっと不安でつらいこともあっただろうに、そばにいられなかったことが悔やまれた。

葵と再会してから一カ月が経った。

はじめは極端になにかに怯え晃介と会うことも消極的だった彼女だが、休日を一日一緒に過ごしたあの日から、明らかに変わりはじめた。

人目を気にするのは相変わらずだが、子供たちとはいつでも会っていいと言い、そのための協力を惜しまないようになった。

晃介は都合がつく限り彼女の家へ行き、育児を手助けした。

おそらく、晃介が双子への思いを率直に語ったことが影響しているのだろう。あるいは、その後の彼女への告白が……?

双子たちと自分の関係について一生秘密してもいいし、今すぐ公にしてもかまわないと言った言葉は本心だ。

すべてを葵がいいと思うようにさせたかった。
自分は三人のそばにいられればそれだけで十分幸せなのだから。

そうやって過ごしたこの一カ月間で、彼女がなにかを抱えているということはほぼ間違いないという確信を晃介は深めていた。

子供たちをたくさん愛してほしいと言った彼女。

その後、"自分の父親は小さい頃に亡くなっているから寂しかった。

ふたりは父親を知ることができてよかった"とこぼしたこともある。

そんな彼女が、出産を自分に言えなかったのはよほどのことがあったのだ。そしてそれは今も解決していない。

外科病棟の自分に与えられた個室に戻り、晃介は帰り支度をする。今は夜勤明けだから、すでに勤務時間は終了だ。
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