双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
だがさっきの患者の様子が気になったから顔を見てから帰ろうと思い産婦人科へ行ったのだ。

晃介が白衣を脱いだ時、コンコンとドアがノックされる。

「先生、すみません。少しよろしいですか?」

「どうぞ」

 入ってきたのは看護師長だった。

「夜勤明けに申し訳ありません」

「いえ、大丈夫。どうかしました?」

「先日依頼があった退職者のリストを作ってきました」

そう言って差し出されたのは、ここ五年間の看護師の退職者リストと退職理由を一覧にしたものだ。一週間ほど前に彼女に依頼しておいた。

「ありがとう、早かったですね」

礼を言って晃介はそのリストを受け取った。

時間がある時でいいと伝えておいたのに予想以上に早く提出されたことに、彼女自身のやる気を感じた。

今月の頭に、晃介は理事に就任した。

そしてすぐに取り掛かったのが人事改革、すなわち職員たちの労働環境の改善だ。

ここ白河病院は、白河一族の医師が優遇される傾向にあるという歪な評価制度が敷かれている。

その上に、看護師の地位も低く見られがちで、人の入れ替わりが激しいと感じていて、そのことに晃介は危機感を覚えていた。

このままでは、優秀な人材が流出し、白河病院が誇る国内最高峰の医療を保てなくなる可能性がある。

看護師たちを取りまとめる立場にある看護師長はそれがよくわかっているのだろう。

頼んだ報告書がすぐに上がってきたことからもそれが伺えた。

「勤めはじめて三年以内に辞めた者と、それ以上の者とに分けてあります」
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