双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
資料にざっくりと目を通す晃介に、看護師長が説明をする。
勤務開始からすぐに辞めた者たちの退職理由に、白河病院の問題点がありそうだ。

「ですが、付属の看護学校出身者で奨学金をもらっていた者はまた別にしてあります。三年経たないと奨学金の返済義務が残りますから、四年目で退職したとしてもこちらのグループに入れてあります」

頷きながらページをめくり、晃介は手を止めて眉を寄せる。葵の名前を見つけたからだ。

彼女が辞めたのは二年半前だから、それ自体は納得できる。

不審に思ったのは名前の横に奨学金をもらった旨の記載があったからだ。退職理由の欄は空白だった。

「……谷本葵さんは、奨学金をもらっていたんですか?」

晃介が尋ねると、看護師長は資料を覗き込み答えた。

「そのようですね」
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