双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
あの頃も彼は『葵の味噌煮込みうどんが好きだ』と言ってくれた。

「俺の分も作ってもらって、申し訳ないけど。俺が来ることで葵のやることが増えるなら意味がない」
 
やや申し訳なさそうに言う晃介に、葵は首を横に振った。

「お迎えも夕飯を作る間子供たちをみてもらえるのも、すごくありがたいから、これくらいなんでもない」

本当は、彼の食事を作ること自体を葵は楽しんでいる。

今までは毎日の自分の食事なんて食べられればなんでもいいという感じで、子供たちの残りものやおにぎり一個で済ますことも少なくはなかった。

でも彼が食べてくれるのだと思うと、大人が食べる分もちゃんとしたものにしようと思える。我ながらげんきんなものだ。

とはいえそれをそのまま言うわけにはいかなくて、わざとなんでもない風を装った。

「どうせ自分の分も作るんだからついでだもん」

「ならいいけど」

 晃介が微笑んだ。

「でももう今週は来られないな。オペ続きで……来週は水曜と土曜に来られると思う」

予定を告げる晃介の言葉に、うどんを食べていた手を止めて、葵は頷いた。

「水曜日と、土曜日ね」

 そしてそのまま箸を置いて立ち上がり「水曜日と土曜日」と繰り返し呟きながらキッチンのカレンダーに丸を打った。

彼が来る日に印をつけたのだ。

「水曜日と土曜日……と、これでよし」
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