双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
はじめて聞く事実に葵は目を丸くする。

その葵を晃介は愉快そうに見てから、少し真面目な表情になった。

「……うちの病院ってさ、俺の曽祖父が開いた病院で、親戚一同、医者でありながら経営にたずさわっているだろう? 叔父や叔母、従兄弟たち。みんな医者で病院内では特別待遇を受けている。……もちろん俺も」

意外な切り口からはじまった彼の話に、葵の胸がどきりとした。

恋人同士だった時から今までで彼の口から家族の話が出るのははじめてのことだった。

「逆に親戚ではない医師たちが認められるためには、たくさんの症例にあたり、実績を積む必要がある。もちろん俺ら白河家の医師もそうするけれど、出世のための必須条件ではない」

晃介はそこで言葉を切ってため息をついた。

「そんな環境では患者を"症例"としか見られなくなるのも無理はないのかもしれないけど、歯がゆく思うことが多かったよ。医局ではいつも難しいオペ、珍しい症例の奪い合いだ。患者のことはそっちのけで、いかに上に認められるかだけしか考えていない医師も少なくはない。だけどそれに俺が意見したところでただの綺麗ごとでしかないのも事実だ」

晃介は、医院長となることが決められている立場だから。

"患者を症例としてしか見られなくなる"
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