双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
同じ病院に勤めているとはいえ、彼とは立場が違いすぎる。

まさか気持ちを伝えようとは思わなかったし、ましてやその恋が叶うなんて思ってもみなかった。

ただ少しの時間を共有できるだけで満足だったのだ。

そんなふたりの関係に変化が起きたのは、ちょうど半年が経った頃、晃介が学会で一カ月地方へ行くことになった時だった。

葵がうっかり『寂しい』と溢してしまったのである。もちろん休憩中毎日会えるというわけではないけれど、一カ月勤務時間中もまったく姿を見られないのは、ふたりで話をするようになってからはじめてのことだったからだ。

とはいえそれを口に出すなんて自分の中ではルール違反。慌てて口を閉じたけれど、時すでに遅しだった。

頬が熱くなるのを感じながらうつむく葵を覗き込み、晃介はにっこりとした。

『俺もだよ。休憩中に君の呟きを聞くのが好きなのに。じゃあ帰ってきたら一カ月分、顔を見られる機会を作ろうか』

そしてはじめてふたりは病院の外で会うことになったのだ。

そうやってはじまった恋人としてのふたりの時間。周囲には秘密にしていたし彼は多忙であまりたくさんの時間を過ごせたわけではないけれど、それでも葵にとって生涯忘れることのできない幸せな日々だった。

そして、一年が過ぎた。
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