双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
とはいえ、ちょこまかと動くふたりにドライヤーをかけるのは至難の技だと思ったのか、動画の力を借りることにしたようだ。

ふたりはテレビに映るパンのキャラクターに夢中になっていて、苦手なドライヤーをかけられても、おとなしくしていた。

熱すぎないように風をあてながら子供たちの髪を乾かす大きな手、その手を見つめているうちに、葵の意識はかつて彼と一緒に過ごした彼のマンションへと飛ばされる。

あの頃彼は、葵の髪をドライヤーで乾かすのが好きだった。

『葵の髪をふわふわにするのが好きなんだ』

彼にそう言われると、コンプレックスだったはずのくせ毛が、どこか誇らしく思えるのだから不思議だった。

ドライヤー片手に、葵の髪を大きな手で何度も何度も丁寧に梳き、言葉通りふわふわにする。
すっかり乾いたら後ろから包み込むように抱きしめるのだ。

『葵の髪、気持ちいい。……いい匂いがする』

熱を帯びた声音で囁いて、髪をかき分けうなじにそっと口づける。

そしてそのまま……。

カチッというスイッチが切れる音に、葵は過去から引き戻される。

振り返った晃介と目が合って、慌てて脱衣所に引き返した。

ドライヤーをかける彼をジッと見つめてしまっていたことが恥ずかしかった。
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