双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
温かい風とともに綺麗な指に何度も優しく髪を梳かれる。

鏡に映る自分の目も、あの頃とまったく同じ色だった。

彼の手が、うなじから差し込まれる感覚に、葵の背中をぞくりと甘い痺れが駆け抜ける。

吐息が漏れてしまいそうになるのを、唇を噛みなんとか耐えた。

——愛してる、彼が愛おしくてたまらない。

その思いで頭の中がいっぱいになる。

髪が乾く頃には、頬はすっかり火照ってしまっていた。

肩にかかる跳ねた髪に指を絡めて、晃介が微笑んだ。

「風邪、引くなよ」

そしてゆっくりと離れた。

「あーう!」

「おー」

リビングから子供たちの声が聞こえる。彼は眉を上げて振り返った。

「どうした?」

その声は、もう父親のそれだった。

「あーテレビが終わっちゃったのか」

答えながら脱衣所を出ていく広い背中に、葵の胸は熱くなる。

溢れる思いを口に出してしまいそうだった。

私もあなたを愛してる、誰よりも大切だと。

でもそしたら、二年半前のあの出来事を話さなくてはならないのだ。

愛しているのに、別れなくてはならなかったつらい理由、彼を信じられなかった自らの罪を。
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