双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
カーディガンを羽織りリビングへ行くと彼はダウンジャケットを身につけていた。

帰り支度をしているのだろう。

なにかを察したように双子が彼の背中と腕にへばりついている。

「ごめん、葵。今日は調べ物があるから、もう帰るよ」

やや早口で言う彼に、葵は頷いた。

「うん、気をつけて。はるくん、ゆうくん、バイバイしようね」

いつもなら彼は子供たちが寝てから帰っていく。
起きているうちに帰ると子供たちが寂しがるからだ。

「また来るからな」

案の定寂しそうにする彼らを、晃介はふたりいっぺんに抱き上げて玄関まで連れていく。

そしてそこで下ろして靴を履いた。小さな手を振る晴馬と悠馬をひとりずつ抱いて、頬を寄せる。

頭を撫でて「また来るよ」と何度も声をかけてから、彼は帰っていった。

静かに閉まるドアを見つめて葵の心は揺れていた。

この幸せが崩れるのが怖かった。

彼が愛おしくてたまらない。
 
でもすべてを話したら、どうなるかわからないとも感じていた。

親戚だろうと刃向かう者は容赦なく切り捨てるという彼の父親が、葵が奨学金を返したからといってそれで引き下がるとは思えない。

目的のためには人の気持ちを微塵も考えない冷酷な男、白河大介。

間違いなく晃介の父親なのだ。

真実を知った時、晃介はいったいどうするのだろう?

「あーう」

悠馬が小さな手でドアを指差し残念そうな声を出す。葵は彼を抱き寄せて呟いた。

「寂しいね。でも大丈夫、また来てくれるから」
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