双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
白い息を吐いて、夜の空を見上げるとビルの隙間に三日月が輝いていた。コインパーキングへ向かって歩いていた晃介は足を止め、葵と子供たちがいるマンションを振り返った。

いつもなら双子たちが眠りについてから家を出る。

起きているうちに帰ると寂しがると葵が言っていたからだ。

でも今夜はどうしてもそれができなかった。

あのまま、子供たちが寝るまで部屋にいたら、どうなってしまったか自分でもわからなかったからだ。

葵の髪をドライヤーで乾かすのは、晃介にとって特別な行為だった。

ちゃんとすればそれなりにまとまると彼女は言うけれど、晃介は少しクセのある髪をふわふわに乾かすのが好きだった。

えもいわれぬいい香りがする髪に顔を埋めて、そこから覗く耳や首筋に口づけるとすぐに桃色に染まっていく。

そのまま本能にまかせて愛するのだ。

脱衣所で目にしたすぐそばある彼女の濡れた髪、艶めく黒に、晃介の視線は釘づけになった。

そして彼女が拒否しないのをいいことに気がついたらドライヤーにスイッチを入れていたのだ。

指の間に感じる艶かな感触に、晃介の意識は幸せな過去へと飛ばされた。
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