双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました

誓いのキス

家族連れで賑わうショッピングモールのメインストリートを、葵は晴馬と悠馬のベビーカーを押して歩いている。

隣では晃介がおもちゃ屋さんの大きな包みを載せたカートを押していた。

「俺こういうところに来るの久しぶりだ」

三階まで吹き抜けになっている天井を見上げて晃介が言う。

葵はそれに答えた。

「私もあんまり来ないな。子供たちを生んでからは……」

都内で初雪を観測したこの日、仕事が休みのふたりは、郊外にあるこのショッピングモールを訪れた。

晃介が子供たちにクリスマスプレゼントを買ってやりたいと言ったからだ。

もちろん子どもたちはまだ幼すぎてクリスマスの意味はよくわからない。

ただ単に彼がなにか買ってやりたかっただけだろう。

『葵が俺と一緒に行けないなら、俺ひとりで連れて行ってもいいし……。それも無理そうなら、ネットで買ってもいいんだけど』

お互いにはっきりと言葉にしたわけではないけれど、葵が晃介とのことを周囲に秘密にしたがっていることに、彼は気がついている。そんな葵を気遣って、彼ははじめそう言った。

でも顔には"一緒に行きたい"と書いてあったのである。

外出に不安はあるものの、本当のところ葵だって一緒に行きたかった。

おもちゃ屋さんでおもちゃを選ぶ子供たちと晃介を見たかった。

迷ったすえに、誰にも会わないであろう家から遠いこのショッピングモールへ彼の車でやってきた、というわけである。

およそファミリーカーとはほど遠い彼の高級車には、ふたりのためのチャイルドシートが設置してあって、彼がこの日をどれだけ楽しみにしていたかがよくわかった。

決心してよかったと思った。

「プレゼント、たくさん買ってくれてありがとう。これで雨の日も少しは退屈せずにすむかな」

どこか弾んだ気持ちで、葵は彼に声をかけた。
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