双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
おもちゃ屋さんでは、ふたりは大興奮だった。そこかしこにためし遊びができるコーナーがあって、彼らは夢中になって遊んでいた。

あれこれ迷ったすえに、彼は電車とレールのセットと、大好きなキャラクターのブロックの大きなセットを買った。

どちらも高額で、葵では買ってあげられないものだった。

「保育園で、ふたりともこれが好きだって言われてたんだけど、ちょっと高いから買ってあげられなかったんだよね」

プレゼントの包みを家で開けた時のふたりの喜ぶ顔を思い浮かべて葵は言う。

「食べるものも服もオムツもなにもかも二倍だから、どうしてもこういうものは後回しになっちゃう。晃介が助けてくれてありがたい」

そこで晃介がなにかもの言いたげな目で自分を見ていることに気がついて、慌てて言い訳をした。

「最近引っ越したから、出費が続いてて……」

「うん。これからはそういう心配はさせないよ」

晃介が足を止めて、エスカレーター横のイベントスペースに飾られた三階まで届く大きなクリスマスツリーを見上げた。

「でも、おもちゃがなくたって、ふたりは幸せだよ。こんなに愛してくれる最高のママがいるんだから」

つられるように足を止めて、葵は背の高い彼の横顔を見上げた。

「最高の……本当にそう思う?」

思わず聞き返した。

ひとりきりでの子育ては、時間もお金も足りなくて、いつもどこか不完全だと感じている。

もっとやってあげたいという気持ちと、できないという現実をもどかしく思うことの繰り返しだ。
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