双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
自分が双子にとって最高の母親だなんて自信はまったくなかった。

「私……ちゃんとお母さんやれてるかな?」

「やれてるに決まってるじゃないか。子供たちのために一生懸命働いて、美味しいご飯を作って」

「……でも、この前は晴馬に傷を作っちゃった」

彼と再会するきっかけになった出来事だ。傷自体はもうすっかり治ったけれど、まだ跡が残っている。

お風呂上がりでバタバタしていた時のことだったとはいえ、止められなかったのが申し訳なかった。

「少しの怪我は仕方がないよ。そのために俺ら外科医がいる。……それにあの時の葵、本当に真っ青だった。子供たちにはちゃんと上着を着せてるのに、自分は着てなくて、怯えるみたいに悠馬を抱いて。まだ双子が自分の子だって知る前だったけど、……頑張ってるんだなって思ったよ」

あの日のことを思い出したのか、晃介が少し寂しそうな声を出す。でもすぐに気を取り直したように微笑んだ。

「一生懸命子供たちに愛情を注いでいる。最高のママだ。そんな君が、俺は愛おしくてたまらない」

「ちょっ……! 晃介!」

人目のある場所で葵への気持ちをそのまま口にする晃介に、葵は声をあげた。

「こんなところで……」

「大丈夫、誰も聞いてないよ。……お、ふたりとも寝たんだな」

晃介がベビーカーを覗き込む。

「もう……」 

葵は頬を膨らませた。

彼は以前"葵に気持ちを伝えるチャンスは逃さない"と言った。

それ以来、その言葉通りちょくちょくこうやって甘い爆弾を落とす。葵はそのたびにくすぐったいような困ったような気持ちにさせられるのだ。

自分の中の後ろめたい気持ちをほったらかしにしてこの甘さに身を委ねてしまいたくなってしまう。そんな気持ちと闘う日々だった。

一方で、最高の母親だと言ってもらえたことは嬉しかった。
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