双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
もちろん誰かに評価されるために子育てしているわけではないけれど、日々の忙しさに疲れて虚しい気持ちになる時もある。失敗続きで、自信なんてまったくない。

でもその頑張りを子供たちの父親である晃介に認めてもらえたのがこれ以上ないくらい嬉しかった。

寝てしまったふたりに、晃介はブランケットをかけてベビーカーのカバーをする。そして振り返った。

「じゃあここからは、ママのご褒美の時間だな」

 そう言ってにっこりとする。
 言葉の意味がわからずに葵は首を傾げた。

「ご褒美?」

「葵にも、なにかプレゼントするよ。服でもバッグでもアクセサリーでも」

「わ、私に⁉︎ 私はいいよ。なにもいらない」

驚いて少し大きな声で言った。

「そんなことしてもらう理由ないし……!」

思わずそう口走ってから、しまったと思い口を閉じた。

ふたりは今子供たちの父と母という関係で、結婚してるわけではない。さらにいうと恋人でもないのだから、言ったことは間違いない。

でも彼の方ははっきりと葵への愛情を口にしてくれている状況で、今の言葉は少しキツい表現だ。

一方で晃介の方は、特に気にする様子もなく肩をすくめた。

「好きな相手になにかプレゼントしたいと思うのは、男の本能だよ。理由はそれで十分だ。行こう!」

そんなことを言って葵からベビーカーを奪い、歩き出した。

「あ、待って、晃介」

いらないと言い張ってついていかない選択もあるけれど、子供たちを連れていかれてしまっては、そうはいかない。葵はカートを押して彼を追いかけた。

「レディースブランドはあっちだ。途中アクセサリー売場もある」

ずらりと並ぶショップを見ながら彼は実に楽しそうだ。

「晃介……!」

このままだと本当に買ってしまいそうだった。
葵は慌てて彼を説得しようと試みる。
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