双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
くせ毛に悩み、しかも晃介が来ない日はろくにヘヤケアできないから葵にとっては魅力的、のひと言だ。

双子の育児で自分のことは後回しにしている今でなければ、もっと前にチェックしていたかもしれない。

「へぇ、いいなぁ、これ」

思わずそう呟くと、同じようにパンフレットを読んでいた晃介が、店員に向かって尋ねた。

「在庫ありますか? 色は……そうだな、シルバーで」

「お調べしてきます」と言って店員がバックヤードへ戻っていく。

その背中が見えなくなってから、葵は慌てて晃介の腕を引く。

「ちょっと、晃介……!」

欲しいと思ったのは事実だが、このドライヤーはほかの物とは、値段がひと桁違っている。これならば、使うかどうかはともかくとして服を買ってもらう方がまだ胸が痛まないくらいだ。

「こんなに高い物、私はいらない。家にあるの、まだ使えるんだし」

やや強い口調でそう言うと、晃介が頷いた。

「わかってるよ。これは俺のだ」

「晃介の? ……ならいいけど」

拍子抜けして、葵はホッと息を吐いた。彼のための物ならば、葵が口を出す筋合いはない。
< 85 / 188 >

この作品をシェア

pagetop