双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
はっきり言ってドライヤーにかける金額としてはありえない値段だが、国内でも有数の大学病院のトップ脳外科医ならば、このくらいは普通だろう。

「びっくりした……」

すると彼はなぜか意味深ににやりと笑う。そしてとんでもない言葉を口にした。

「俺が"葵の髪を乾かす時に使う用"だ」

「なっ……!」

 葵は言葉に詰まって目を剥いた。

「だから葵の家に置かせてくれ。もちろん俺がいない時は使ってもいいよ」

にっこり笑って彼は言う。
その言葉に、葵の頬が熱くなった。

あの日以来、彼が家に来た時は、葵の髪を乾かすのは彼の役目になっている。

子供たちが短い動画を観ているほんの少しの間だけ、あの頃のふたりのように彼は葵の髪に触れる。葵はそれを鏡越しに見つめている。

もちろん、それ以上のことはなにもないけれど……。

どこか秘密めいたふたりだけのやり取りを、こんなところで口にされて葵は真っ赤になってしまう。

しかもやっぱりハメられたのだ。

どうしても彼は葵のプレゼントを買いたいようだ。

「すみません、シルバーは在庫を切らしているようです。今日お持ち帰りになれるのはブラックかブルーになります」

店員が小走りで戻ってきて、申し訳なさそうに言う。

晃介が頷いた。

「ブラックかブルーか。どっちがいい? 葵」

「……知らない。私は関係ないもん」
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