双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
火照った頬を膨らませて葵は言う。

「晃介の物でしょう?」

「でも葵の家に置くんだぞ、俺の家にはドライヤーあるし。ほら、葵が決めて。ブラックかブルーだって。どっちがいい?」

葵の抗議をものともせず、平然として尋ねる晃介は、実に楽しそうだった。

考えてみれば付き合っていた時も彼はいつもこうだった。

なにか理由をつけては、葵の身の丈に合わないような高級なレストランやプレゼントを惜しみなく葵に与える。

『こうやって葵を甘やかすのが、俺の楽しみなんだ。俺の趣味に付き合うつもりで好きにさせて』

そんな言葉を口にして。

あの頃もらった服やアクセサリーは、別れる時にすべて送り返したけれど……。

きっとここで断固拒否しても、彼はまたあの手この手で葵になにかを買うだろう。だったら本当に欲しいものを選ぶ方がいいような……。

「シルバーがよろしければお取り寄せもできますよ」

にこやかに言う店員に、葵は慌てて首を振る。

「そこまでは……」

そして、仕方なくという気持ちで実物をジッと見比べる。

でもすぐにわくわくと胸が躍った。

目の前のドライヤーは、性能もさることながら、マッドなカラーとフォルムが最高にカッコよかった。頬を染めて葵は小さな声で答えた。

「……じゃあ、ブルーで」

「決まりだな」
 
晃介が嬉しそうに微笑んだ。
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