双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
髪にあてられていた柔らかな風が音もなく止み、同時に後ろから温かな腕に包み込まれる。

背中から感じる晃介の温もりに、葵の胸がどくんと大きな音を立てた。

リビングからは、子供番組の軽快な歌が聞こえてくる。

歌が終われば動画は止まり、子供たちがこちらへやって来る。

それまでに彼の腕から抜け出さなくてはと思うのに、どうしても身体が動かなかった。

洗い立ての葵の髪に顔を埋めて、晃介がくぐもった声を出した。

「葵の髪、気持ちいい」

ショッピングモールへのお出かけを、子供たちは存分に楽しんだ。

ベビーカーでのお昼寝から目覚めた後もプレイコーナーで遊び、本屋では音の出る本を買ってもらい……。

帰りにファミリーレストランで夕食を済ませてからマンションへ帰ってきた。

そしていつものように葵と一緒に入浴した。

双子を送り出し葵もパジャマを身につけて髪を拭いていたら、買ったばかりのドライヤー片手に彼が脱衣所へやってきたのである。

彼は葵を腕に閉じ込めたまま、気持ちよさそうに髪に頬ずりをする。

葵の身体が甘く痺れた。

こんなに近くに彼を感じるのは二年半ぶりのことだった。

突然の出来事への困惑に混じる、甘い期待。
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