双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
駐車場の隅っこに停めてある黄色い軽自動車にふたりを乗せと、さすがに疲れたのだろう、晴馬もうとうととし始めた。

スライドドアを閉めて、葵はふーと長いため息をついた。

あまりにも突然のことでなにか起きたのかわからないくらいだった。

同じ町にいるだから、可能性がなくはないのは知っていても、ほとんどゼロに近いと思っていた。なにせここは都内なのだから。

胸の鼓動がうるさいくらいに鳴っている。

会ってはいけない人に会ってしまったことが不安でたまらなかった。

医師と患者としての会話以上にはなにもなかったのだから問題はないはずと、一生懸命、自分自身に言い聞かせる。

それにもうこれきりなんだし……。

そんなことを考えながら、葵はスライドドアに映る自分の姿に目を留める。

晴馬が怪我をしたのがちょうどお風呂上がりだったから、ろくに髪を乾かす暇がなかった。

少し癖のあるセミロングの黒い髪はボサボサで、しかも服装は明らかに部屋着とわかるものだ。

もともと平凡な顔立ちでおしゃれをしたとしてもたいして見栄えはしないけれど、それにしても二十七歳にしては疲れて見えた。

かつての恋人との二年半ぶりの再会だというのに、よりによってこんな姿だなんて。せめてもう少しマシな格好で会いたかった。

そんなことが頭に浮かび、慌ててその考えにストップをかける。

どうせもう二度と会わないのだから、そんなことはどうでもいい。気を取り直し、運転席の取手に手をかけた時。
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