双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵も向かいに座り頷いた。

「……うん」

「ふんぱつしたねぇ、あれ高いでしょ? ばあばサンタもがんばらなくちゃ」

クリスマスは目前だ。

晃介と同じようにふたりになにか贈りたいと思っている母は、広告に目を通して主要なおもちゃの値段を把握しているのだろう。

葵は手の中の湯呑みに視線を落とした。

高かったのは事実だが、自分が買ったのではないと言うべきか迷っているのである。

言えば当然、買ってもらった人物について言及しなくてはならない。
「葵?」

 黙り込んだ葵に母が首を傾げだ。

「……私が買ったんじゃないの、あれ」

 母ひとり子ひとりで育ててくれた母は、子供たちの父親について頑なに口を閉ざす葵に複雑な思いを抱いているに違いない。

それでも妊娠、出産と大変な時期を支えてくれた。

病気が見つかって無理のできない身体なった後もこうやってちょくちょく来ては可愛がってくれている。

嘘をつきたくはなかった。
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