双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「そうじゃないんだけど……」

葵は言葉を濁した。さすがに込み入った事情すべてを話すわけにはいかない。

黙り込む葵に、やれやれというように母はため息をついた。

「まあ、そういうことは、なかなかすぐに結論は出ないかもしれないわね。差しあたって子供たちのことが解決しただけでも、よかったじゃない。安心したわ。それに、時々来てくださってるなら心強い。ここ古いし一階だもん、ちょっと心配してたのよ」

本当のところ葵の中で結論はもう出ていた。

再会してからはじめてキスを交わしたあの時の彼の視線と強い言葉、揺るぎない決意を目のあたりにして彼を信じようと決めたのだ。

白河大介は怖いけれど、彼となら立ち向かえる。

親子であるがゆえの予想できない衝突もきっと乗り越えられるはず。

あの時、葵が彼を信じられなかったことについてもきちんと話せば受け止めてくれるだろう。

「まあしっかり考えなさい」

母の言葉に、葵は頷いた。

「うん、そうする」

こうして彼の存在を母に明かせたことも第一歩だと思う。

こうやってひとつひとつのことを乗り越えていこう。

そうすれば、その先にはきっとなにも憂うことのない幸せな未来が広がっているはず。

柔らかな日の光が差し込むリビングで、楽しそうに遊ぶ子供たちを見つめて、葵はそう思った。
< 97 / 188 >

この作品をシェア

pagetop