純×恋(じゅんれん)
(やっと,4日)

純はこの課題が,こんなに堪えるなんて思ってもいなかった。

教室も折角同じなのに,話すこともままならない。

純と交換された恋のペアは,去年もおんなじクラスであった,背の低い,ギャルっぽく活発な可愛い女の子。

純はその姿を思い浮かべては,ざわざわと心を揺らがしていた。



「きいとちゃん」

「なんですか? (はるか)くん」



かく言う純のペアもまた,クラス内で見てもとても明るい性格をしている。

純は何の怨みもないのに,はるかの前では自然に振る舞えない事を申し訳なく思っていた。



「あと半分だね」



ドキッとして,頬が強張る。



「そんな顔してた」



どんな顔だろう。

遥は言いながら苦笑している。

純はまた,遥のその表情を見て困った顔になった。

純は決して,遥が嫌いなわけではない。

だけどつい,きいとと柔らかく呼ぶのは,恋であって欲しいと思ってしまうのだ。

ごめんなさいと弁解しようとしても,自分の中に見つかる言葉はやはり無い。



「"熟年夫婦",でも,ヤキモチ妬いたりするんだ」



懐かしいあだ名だと思う。

ただ,ヤキモチなんて単語には一切聞き覚えがなかった。



「誰がですか?」



目を見開いて訊ねると,相手も同じ顔をする。



「え? きいとちゃん,鰻田がうちのまゆゆと居るの,心配で仕方ないんでしょ?」

「そ,そうなのでしょうか…」



恋のペアとなった真優。

確かに2人を見ていて,もやもやとする気持ちは純の中にある。

けれど,それがそうであるかと聞かれれば……

ぽぽぽと,純の頬が染まっていく。

(ヤキモチ? これが……?)

そんな純を見て,遥はにこりと危うげに笑った。
< 14 / 28 >

この作品をシェア

pagetop